オオタカと常緑広葉樹

   写真はイメージです
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普段あまりテレビを見ないのだが、昨日NHKスペシャルでやっていた「明治神宮 不思議の森~100年の大実験~」は大変に興味深く、最初から最後まで集中して見入ってしまった。


私は造園のお勉強をしたことがあるので、なおのこと面白かったのだが、そうではない方のために大雑把に解説すると、明治神宮の鎮守の森は、100年前の大正4年に本田静六という造園学者らが中心になって造られた人工の森で、計画段階で樹木の勢力の長期的な移り変わりを予想し、100年、150年後に望ましい森になるよう意図して造られたもの。

そして、崩御された明治天皇のため国中の人が樹木や労力を提供したという国家プロジェクトなのであるが、番組では本多らが予想したよりも早く、立派な森になった証左を次々に紹介していた。

 

中でも興味深かったのは、カシやシイ、クスノキなど成長の早い木が繁茂し、マツやスギなどは日陰になって駆逐されたことや、オオタカが飛来するだけでなく、営巣していることであった。

 

明治神宮にオオタカがいるのは話に聞いていたが、番組ではオオタカがアオダイショウと一戦を交える場面などが流されており、私は驚きと嬉しさで何とも言えない気分になってしまった。

 

他にも、日本固有の生物がタイムカプセルのように鎮守の森に封じ込められ、脈々とその命をつないでいることや、人けのない時間帯には結構大きめのタヌキが明治神宮の境内をウロウロしていることなどなど、感動のポイントはたくさんあった。見逃した方は再放送などで是非、御覧いただきたい。

 

番組の宣伝はともかく、私がもっとも腑に落ちたのは、少なくとも関東平野には常緑広葉樹がふさわしいということだ。私は関東平野に住んでいて、近隣はスギやヒノキだらけなのだが、いつも落ち着かないような気分になっているのは、常緑広葉樹不足が原因なのかと思い当たった。

 

明治神宮では植栽以降、最低限の手入れにとどめ、自然淘汰に任せるという実験を100年も行った。人間の都合に合わせると、材木として使い勝手のよい針葉樹が優先され、鬱蒼としやすい常緑広葉樹は伐採されまくるが、自然の摂理はそうなっていないようだ。

 

ところで明治神宮の森では、食物連鎖の頂点にオオタカがいるという。もし、関東平野に人間が住んでいなければ(もっといえば日本列島に人間がいなければ)、常緑広葉樹が繁茂し、オオタカを頂点とする生態系になるのだろうか、それとも第三の何者かが君臨するのだろうか。想像は尽きない。

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コメント: 3
  • #1

    ナニウエル (火曜日, 12 5月 2015 09:18)

    たくさんの有要な情報をありがとうございます。とても分かりやすいので即ブックマークさせていただきました。ダメ剪定への評価も毒がなく、「諸説ありますが、私ならこうします」といったお話も明解で心地よいと思いました。ところで、画面左のメニューから「モミジ」へのリンクがないですね。http://niwa-iro.jimdo.com/2012/11/18/モミジの剪定/ へのリンクがあった方が良いと思いました。体に気をつけて、御ウェブ是非長く続けてください。

  • #2

    niwa-iro (水曜日, 13 5月 2015 09:06)

    ナニウエルさん(いい名前ですね。少し悔しいです。)
    コメントありがとうございます。
    「ダメ剪定」を充実させたいと思ってはいるのですが、あまりに絶望的な剪定の場合、お気の毒で、所有者に声をかけることがはばかられるという難しい事情があります。
    モミジについては、御助言に従ってリンクを張りました。サイトの構造上のこともあって、暫定的なものですが・・・。モミジについてはそのうち解説的なページを作ろうと思って、忘れていたのかもしれません。

  • #3

    ナニウエル (金曜日, 29 5月 2015)

    御サイトのカツラの剪定が本当に分かりやすいです。お手間に感謝します。
    ウチのカツラはまだ幼木なので、来年から少しずつ手を入れていこうと思います。

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