植木職人用語事典 タ行

立て入れ(たていれ)

 植栽した木がまっすぐに植えられているかどうかということ。「立て入れを見ろ。」とは「垂直を確認せよ。」という意味。しかし、真にまっすぐな樹木はこの世に存在しないため、新人は答えに迷うはめになる。その場合は全体の雰囲気!を見て判断する。どうせ何を答えても、親方の主観で修正されるので、自分なりに考えた上で即答すること。「OKです。」と。 

 

足袋(たび)

 地下足袋です。「ちかたび」と言う方もいます。「こはぜ」のところにも書きましたが、慣れないとはきにくいです。サラリーマンから転職した方だと、この足袋を履くことに誇りを感じたり、抵抗を感じたりと悲喜交々でしょう。ただし、地下足袋は履きものとして類まれな一品です。

 安易な気持ちで運動靴や作業靴で木に登ると、木の幹に傷が付きます。また、滑って危険です。地下足袋にはこうしたリスクがありません。また、足裏の感触で危機管理できます。大げさですが、履きなれてくると感覚が研ぎ澄まされて、木肌の凹凸や枯れ枝かを足で見分ける(踏み分ける?)ことができるようになります。

 私は植木屋を止めた後、足裏の皮がむけて驚いた経験があります。毎日、アスファルトの上も地下足袋で歩いていたため、足裏の皮が厚くなっていたのです。ちょうどアフリカの人が素足で山の中を駆け巡っている様子が浮かびました。人間の身体って不思議です。

→ こうした地下足袋が一般的で、特に「力王」という会社の ものが人気です。しかし、こだわりのある職人は黒ではなく、藍色の染物や、コハゼが10枚のもの(丈がより短い)を使用します。


玉散らし(たまちらし)

 刈り込みばさみで剪定する際の、仕上げ方の一種。木バサミで枝を抜くような手入れではなく、丸い玉があちこちに散っているように見える仕上げで、昔ながらのお屋敷で見かける人為的な剪定です。主な対象はツゲ、マキ、モチノキなど。

 ベテランにとってはあまり面白味がなく、単調な作業なので新人が最初にやらされる剪定作業でもあります。 

 「ダメな剪定の例」に書きましたが、上部ほど小さい玉に仕上げます。この「玉散らし」を上手にクリアすれば新人から脱却できます。

 

土極め(つちぎめ)

 植木を移植した直後の、土や水遣りの方法の一つです。他に「水極め(みずぎめ)」という方法があります。

 移植後、木を穴の中に置いただけでは、根と土の間に隙間があって、水分や養分を吸収することができません。通常は「水極め」という方法で、ホースを使って土を泥状にしながら根の周りに流し入れるのですが、タイサンボク、モクレンといった一部の植物は、「水極め」では根腐れを起こしやすくなるため、泥にせず、「突き棒」やバールを使って土だけを押し込みます。これを「土極め」といいます。ただし、プロでも勘違いしている方がいるのですが、「土極め」でも最後にはホースで水遣りをします。

 この作業をやるのはけっこうツライです。特に大きな植え穴は終わりが見えません。木を揺らせばいくらでも土が入ります。また、すごく前時代的な作業で、「他にもっといい方法があるんじゃないの?」と懐疑的になります。しかし、木の根(特に細根が大事)はデリケートです。木のためにも丁寧に行いましょう。

 

手刈り(てがり)

 電気やエンジン式のヘッジトリマーに対して、刈り込みバサミのことを「手刈り」と呼びます。動力を用いず人力で行うためです。 

 集合住宅や街路樹、公園などの剪定で使用するのは稀で、主に個人宅の剪定に使用します。

 素人でも容易に扱えますが、奥の深い道具であり、きちんと使用するには相応の経験を要します。

 造園の教科書を見ると「片方の刃は固定し、もう片方の刃だけで切るように使う。」とあり、現場でもそのように繰り返し指導されます。しかし実際には困難です。「片方の刃は固定し、もう片方の刃だけで切るような気持ちで使う。」のが正確な表現です。右利きの人であれば、左の刃は「受け」として動かさないようにして、右の刃でザクザクと刈っていく、という気持ちです。傍から見れば両手が動いているように見えます。

 また、良い仕事をするには手入れが不可欠です。刈り込みバサミには細かな切りカスが付きやすく、水分を含んだそれらは錆の原因にもなります。作業後は砥石、水で汚れを落とし、CRCなどの錆止めをします。  

 

 

突き棒(つきぼう)

 石や杉柱を据え付けた後、それらをしっかりと固定するために使う木の棒。「極め棒(きめぼう)」とも言う。130センチ~150センチの棍棒(こんぼう)で、下の面(打突面)はある程度面積がないと作業にならないが、握って使用する都合上、上部にいくに従って細くなるものが使いやすい。

 「突き棒」は造園会社には当たり前に備わっているが、ホームセンターなどに売っている代物ではなく、お手製のものである。

 以前、ホームセンターで「突き棒になるような棒を探してるんだけど」と、アルバイトに尋ねたところ、他の店員に電話して、「お客さんが『突き棒』なるものを探していらっしゃるのですが。」と困惑していました。ちょうどいい太さ、長さ、材質のものってなかなかありません。  

 

手熊手(てくまで)

 道具を使わず、指を熊手のように広げて掃除をすること。これができるようになると掃除が格段に早くなる。指先への力の入れ加減が難しく、不器用な人は大事なコケを傷つけたり、はたまたゴミを掻き集められなかったして、何年経ってもできない。

 個人宅の庭であれば道具を使うより早く、自然な仕上がりになるため、是非マスターしたいものである。

 

手甲(てっこう)

 手首に巻く保護具で地下足袋を同様に、こはぜを使って留めるものやマジックテープ式のものがある。ハサミやのこぎりで手首を傷付けないようにするのはもちろん、針葉樹などの尖った刃や、毛虫の攻撃をある程度避けることができるが、効果のほどは疑問である。

 また、さしたる仕事もできない新人が着けていると「形から入っている」とか、「十年早い」とか「生意気」と見られがちで、暑い夏には不快であるなどの欠点もある。

 

手袋(てぶくろ)

 軍手、ゴム手、皮手などの相当な種類がある。のこぎりやハサミを扱いやすいものを自分なりに探すこと。

 一番安価な軍手を選択しがちだが、軍手はハサミが容易に貫通して怪我をしやすいこと、マメができやすいことから、特に新人にはおすすめできない。

 また、「手熊手」を使うような仕上げの場面で軍手を使うのは御法度であり、掃除は素手が理想である。軍手には落ち葉、枯葉が付着しやすく、集中して作業できないからである。

 素手に抵抗があるなら、自分の手にフィットしたゴム手袋が望ましい。ゴム手袋はいろいろな商品(200円~500円くらいのもの)を試して、自分なりの究極のものを見付けよう。

 皮手袋は値段が高い割りに手先の感覚がつかめないため、上質な作業にはまったく不向きである。

 

手箒(てぼうき)

 竹製の小さなホウキ。市販品もあるが使いにくく、竹ぼうきの残骸と針金等を利用して自分で作った方が良い。庭掃除の仕上げを左右する大事な道具であり、天候や場所によって使い分けられるように数種類を携帯すると良い。

 竹ぼうきも同様だが、砂利やアスファルトの上は先が硬いもの、土やコケの上は先が柔らかいものを使う。 

 

 

→ 市販の手ボウキです。近所に手頃なものが売っていない方はネット上で購入することもできます。200円~400円程度です。家庭で使う分にはいいでしょうが、大き過ぎるものが多いので、多少加工して、使いやすくするのがベターです。


手元(てもと)

 地走り(じばしり)とも言う。「使い走り」の職人のこと。新米はここから始まり、多くの新人がここで辞める。

 親方や先輩が次に何をしたいのか、必要な道具は何か、進路や作業の邪魔になっているものはないか、などについて先読みして行動することが求められる。

 誰よりも早く出勤し、だれよりも遅くまで片付けをする。「残業代」や「超過勤務」などという概念はない。現場が終わったら酒を買いに行く、お酌をする、コップを洗う、など仕事に終わりはない。

 作業のメインは邪魔なものの片付け、掃除、草むしりとなる。会社によっては3年間は下草の剪定さえさせないというところもある。

 手元を脱却するには、求められることに素早く反応し、親方や先輩に認められること、あるいは掃除や草取りをスピーディーに行い、彼らの作業に「追いついて」、「あんたらの腕が遅いんで、自分、暇になってます。」という感じをアピールすることだ。そうすれば剪定をさせざるを得ないし、そのころには、誰よりも早く枝葉の処理ができるようになっている。

 だいたい、植木屋の仕事は掃除が八割である。掃除が早いというのは独立開業後も必須のことで、後々楽に商売ができるようになるはずだ。また、掃除が早く、うまい植木屋は腕も確かである。

 また、植木屋には他の職人同様、「技術は見て盗む。」という伝統が生きている。サラリーマンのように何週間も研修と称してマニュアルを言葉で教えるようなことはない。そして言葉で表現することを苦手としている職人もいるし、何よりも言葉では表現できないことが多い、感覚を磨いていくことが必要な世界である。

 掃除をしているとき、ただ、掃除をするのではなく、頭上を見上げては作業の手順を学び、地面を見ては切り落とされた木屑を見て、その切り方を学ぶのである。のほほんと手元を務めていれば、一生うだつが上がらない。

 

天端(てんば)

 最上部、上の面のことで、「てんぱ」と発音する人もいる。生垣の剪定作業で用いることが多い。剪定作業では大事な「面」だが、長時間の作業は腕が疲れるので、新人に任されることもある。「天端を先にやれって言ってんだろう。」などと用いる。

 

胴吹き(どうぶき)

 幹から直接出ている小さな芽のこと。幹吹き(みきぶき)とも言う。放っておくと樹形が乱れたり、枝が込み合って病害虫を発生しやすくするため、基本的にはすべて切除する。胴吹きは素人にも判別しやすいので、これを切るのは新人向けの作業になりがちである。「胴吹きとっちまえや。」などと用いる。

 ところで、どこからどこまでが「胴吹き」なの?という疑問が生じる樹木もある。基本的には主幹(メインの幹)に出ているものだけを切除する。枝分かれした先のものまで切除すると、親方に叱られるかもしれない。

 

胴縁(どうぶち)

 「胴吹き」と聞き間違えやすいが、使用する状況がまったく異なる。胴縁とは、竹垣の中で、横向きに使っている竹のことである。縦に使っている竹は「立て子」と呼んで区別している。他の業界でも横向きに使っている部材を胴縁と呼んでいる。

 

飛び枝

 単に「とび」ともいう。一本だけピョンと飛び出している枝のことで、全体の和を乱すため切り除かれる。「飛びだけ切ればいいんじゃないの。」とは、それほど木の形が乱れていないため、大掛かりに剪定しなくても形になるから、他より著しく伸びている枝だけ剪定しようよ。」という意味になる。また、剪定すべき枝を剪定し忘れて、部分的に枝がピョーンと残っているような場合、「あそこにトビあるよ」とか、「あそこ飛んでんじゃねーか」と用いる。

 

泥(どろ)

 土のこと。泥遊びの泥ではない。木を植えた直後、ホースで水とともに根元に土を入れる際、「もっとドロ入れろ。」などと言う。「もっと土を入れろ」というよりもプロフェッショナルな感じになる。

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